私はこれまで兼業社内SEとして10年ほど中小企業に勤務してきました。
そのときの経験から、社内SEに必要なインフラ関連のスキルについてお伝えしたいと思います。
社内SEに必要なインフラスキルとは?
社内SE(システムエンジニア)として活動していくために最低限必要なインフラのスキルには、大きく分けると次の2つがあります。
- ネットワーク構築スキル
- サーバー構築スキル
この2つのスキルがあればなんとか社内のIT環境は維持していけると思います。
こんなふうに思った方は経験が足りない証拠ですので経験を積みましょう。
ネットワーク構築もサーバー構築もどちらも奥が深く覚えることが膨大にあります。
そのためIT分野での経験が無い人や、新卒などの社会人1年目の人が社内SEを目指すことはあまりおすすめできません。
ちなみに通常のSIer会社のエンジニアであれば、業務内で分業しているためサーバー構築とかネットワーク構築とか何か1つに特化してさえすれば仕事ができることが多いです。
次にそれぞれのスキルについて具体的に説明します。
とその前に、パソコンを使って仕事をするすべての人に知ってもらいたい「OSI参照モデル」についてお伝えします。
※これさえ知ってればあなた自身が幸せになれますよ
OSI参照モデルとは?
OSI参照モデルとは、コンピュータ同士が通信する際の仕組みを階層化したものになります。
かんたんに言うと、パソコン同士の通信に欠かせない役割をグループ分けしたものですね。
詳しく説明します。
OSI参照モデルの階層は次のようになっています。
第一階層「物理層」
物理層とは一言でいうとLANケーブルや光ケーブル、そしてWiFiの電波のことです。
そもそもパソコン同士がケーブルや無線WiFiでつながっていないと通信はできませんよね。
この物理的な仕組みを包括しているのが物理層です。
第二階層「データリンク層」
次にデータリンク層があります。
物理層がLANケーブルならデータリンク層はそのケーブル上を流れる電気信号(フレームと呼ばれる)になります。
接続方法には様々な規格があります。
そして同じ規格同士がケーブルなどで接続されることで通信ができるようになるんです。
第三階層「ネットワーク層」
次にネットワーク層です。
この層では、データリンク層で実現した通信に対して宛先の管理機能を定義しています。
ちなみにIPアドレスって聞いたことありますか?
IPアドレスとは各コンピュータの住所のようなものです。
コンピュータ毎にユニークな番号を割り当てて、データの宛先や送信元の把握に利用されます。
このIPアドレス等を利用してデータリンク層で流れているフレームを目的地まで運ぶ仕組みを定義しているのがネットワーク層になります。
第四階層「トランスポート層」
ここからが少しむずかしくなってきます。
トランスポート層では通信の品質に関する仕組みを定義してます。
品質を管理する仕組みを登場人物に例えると、「データは送りっぱなしでよいとするUDPさん」、もう一人が「送ったデータが正しく送られたのか確認の連絡を必要とするTCPさん」が存在します。
UDPさんの場合は送ったものが壊れている可能性もありますが、確認の手間が省けるので通信速度が早くなるといったメリットもあります。
通信するデータ量が膨大だったり多数の宛先に大量のデータを配信しなければならない通信を必要とするサービスで利用されています。(例、YouTubeなど)
それとは逆にデータが壊れていたら再送して高品質を保つのがTCPさんですね。
WEBサイトの閲覧やファイルサーバーへのファイルコピーなどで利用されています。
第五階層「セッション層」
セッション層では、コンピュータ間通信の一連の流れを定義しています。
例えば、次のようなやり取りがあります。
A(これから会議で使うデータを送ってもいい?)
(OK!待ってます。)B
A(じゃ送るね!)
通信中・・・
A(送信が完了したよ)
(ありがとう!)B
セッション層では、このようなやり取りを管理しています。
第六階層「プレゼンテーション層」
次にプレゼンテーション層です。
プレゼンテーション層ではコンピュータ間で通信されるデータを、ネットワーク上で配送できる形に変換する(逆も然り)仕組みを定義しています。
例えば、「こんにちは!」と記載されたテキストファイルがあるとします。
このファイルをネットワーク通信で送信しようとするとき、OSI参照モデルのセッション層にの下位層で取り扱うことができる形に変換してあげる必要があるんです。
逆も同じですね。
プレゼンテーション層とはまるで会話を成立させるために、なまりの強い方言を標準語に変換してあげる通訳者のような仕組みです。
第七階層「アプリケーション層」
最後にアプリケーション層について説明します。
アプリケーション層ではユーザーインターフェイス、つまりWEBサイトを閲覧するときに使用するブラウザソフトなどのアプリケーションを定義しています。
相手方のコンピュータから受け取ったデータをどのように画面に表示させるか?
相手にどのような情報を届けるか?
という部分の仕組みを定義している層になります。
以上がOSI参照モデルのかんたんな説明になります。
7つもあって複雑に感じたと思いますが、まずは1~4階層、そして7階層目だけ覚えておけば良いと思います。
なぜOSI参照モデルを知っておくと幸せになれるのか?
そしてこのOSI参照モデルを知っているとなぜ幸せになれるか?
その理由は、パソコンを使った仕事の中で遭遇する様々なトラブルに対処できるようになるからです。
例えば、「突然ファイルサーバーにつながらなくなった!」という事象が発生したとします。
そのとき、このOSI参照モデルを知らない人はこのような反応をすると思います。
ですが、OSI参照モデルを知っている人であれば次のような反応をします。
そうなんです。
OSI参照モデルを知っている人であれば階層毎に順を追って問題点の切り分けができるようになるんです。
その結果、スムーズに問題の原因を突き止めることができるため、不具合に迅速に対応できるようになります。
ぜひOSI参照モデルを覚えておきましょう。
ネットワーク構築スキル
まずはネットワーク構築スキルについて。
中小企業の社内には少なからずパソコンが複数台存在すると思います。
そして今の時代、ネットワークに接続されていないパソコンなんて存在していないのが普通ではないでしょうか?
そのため、社内でパソコンが追加されたときやファイルサーバーが導入されたときなどに必ずと言っていいほどネットワークの知識が必要になります。
よくあるネットワーク作業
私の場合ですが次のようなネットワークに関する社内作業を経験してきました。
- 社外からも社内に設置されているグループウェアを利用できるようにする(VPN接続)
- 無線ネットワークを導入する(Wi-Fi環境構築)
- 社内ネットワークの通信速度を改善する(ネットワークメンテナンス)
- 社内に個別のネットワークを作る(新規ネットワーク構築)
- 機械装置をネットワークに接続する
その上で、ここでは最低限身に付けておいたほうが良いネットワークスキルをまとめてみました。
スキル2.無線環境構築スキル
スキル3.ネットワークセキュリティスキル
TCP/IPスキルとは?
ここで言うTCP/IPスキルとは、OSI参照モデルでいう1階層〜4階層に基づいたスキルのことです。
具体的には1人で次のことができるようになれれば、社内SEとして役立つことができると思います。
※僕ならこのような人を採用したいと人事に伝えます。
1.LANケーブルのクロスケーブルとストレートケーブルの使い分けができる
2.ネットワーク上でデータを送信する際にどのような順序で相手先のコンピュータまで到達できるかを説明できる
3.IPネットワークのルーティング設計ができる
4.IPアドレス帯の設計ができる
5.ネットワーク設計に基づいたネットワーク機器の選定ができる
6.DHCPを利用せずにパソコンやプリンタをネットワークに接続できる
以上が最低限身に付けてほしいTCP/IPスキルになります。
無線環境構築スキル
次に無線環境の構築スキルです。
TCP/IPスキルに被る部分がありますが、具体的に身に付けてほしいスキルは次のとおりです。
1.無線の暗号化設定及び認証設定ができること
2.無線接続でRADIUS認証の仕組みを構築できること
3.収容クライアントの台数を考慮して機器選定ができること
無線環境については以上です。
ネットワークセキュリティスキル
次にネットワークセキュリティについて説明します。
セキュリティと言ってもピンとこないかもしれませんが、セキュリティは大事なもので必ず身に付けておいてほしいです。
セキュリティに関して企業の内情や業務の特性も影響しやすいため、僕の経験から必要だと思うスキルを説明しますね。
1.MAC認証(ARP認証も含む)の仕組みを構築できること
2.UTM製品の選定及び導入ができること
3.VPN環境の構築ができること
ネットワークセキュリティに関しては以上になります。
中小企業だけかもしれませんが、ネットワークは一度構築してしまうと数年間は大きな作業は必要ないです。
しかし、いざネットワークで不具合や障害が発生するとネットワークのスキルが無いだけに数時間あるいは数日間、対応作業に追われる場合もあります。
社内SEとしてネットワークという重要なインフラを管理できるように、しっかりとスキルを身に着けておくことが大切です。
サーバー構築スキル
次は社内SEになるために最低限身に付けてほしいサーバースキルになります。
サーバースキルと言うとざっくりし過ぎですが、私が社内SEに必要だと思う具体的なスキルは下記のとおりです。
- Linuxで各種サーバー「WEB、DNS、メール、データベース、プロキシ、ファイル、ログ等」を構築及び運用するスキル
- Windowsサーバーで「ActiveDirectory、ファイルサーバー、WSUS」を構築及び運用するスキル
上記のサーバースキルが身に付いている人であればある程度汎用性も持ち合わせていると思いますので、新しいシステムやサーバーの構築時にスムーズに対応できると思います。
実際にはもっと多くの知識やスキルが付随して必要になりますが。。。
以上が私がこれまで経験してきて中で必要だと思う、社内SEに必須のインフラのスキルになります。
これもあったほうが良いと思う!などのご意見があればぜひコメントいただければ幸いです。
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